(H29年1月28日掲載) 超高圧下でできた新鉱物を探して20年 三郡変成岩に随伴して産する超塩基性岩・・・頑火輝岩 (位置:浜田市大金町姉金)
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右の二枚の写真は、先日久しぶりにここへ出かけて行って撮影したものです。 住所は浜田市ですが、谷川を隔てて江津市に隣接してます。
当館を開設して今年で二十年になりますが、このころから超塩基性岩の成因やそれに含まれている鉱物などに興味があって、この大金町姉金産の頑火輝岩(がんかきがん)という超塩基性岩についてもよく踏査してました。 しかし、この付近は非常に露頭状況が悪く、ほとんど露頭などはなくて山斜面や谷川筋に転がっている転石を手がかりに調べて歩くしかなかったです。 まさに転石地質学といった感じでした。
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下の左端の写真は、現在も当館に展示している頑火輝岩で、この中に長さが5センチ近くもある長柱状の頑火輝石が放射状に集合しています。 頑火輝石は斜方輝石のMg側の端成分ですが、この標本のものが本当に純粋な頑火輝石なのかどうかは実際に分析したわけではないのでわかりません。 当館では肉眼の鑑定と安価な偏光顕微鏡による検鏡だけで精一杯で、これ以上のことはよくわかりません。
下の右側二枚の写真は、顕微鏡で組織を観察するために製作した薄片です。 斜方輝石以外に微細な不透明鉱物が多く含まれており、その大部分は磁鉄鉱などの磁性鉱物で、それ以外にチタン鉄鉱やクロム鉄鉱、磁鉄鉱とは別のスピネルの類の鉱物もあります。 また、非常に干渉色の低いうろこ状に集まった鉱物が見られ、もしかしてカンラン石が変質したものかもしれません。 蛇紋石かもしれません。 露頭の岩石も転石も風化が進んでいて軟質なものばかりで、薄片を作りやすいのでたくさん作りましたが、反面変質が進んでいて検鏡しにくいものばかりで困りました。
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上の文章は、頑火輝岩を展示した当初にこれといっしょに使用した解説プレートに記載していたものです。 磁性鉱物を多く含むので、小片であれば容易に磁石にくっつき、磁石とともに展示して大変好評でした。
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頑火輝岩の成因は何か、もしかしてダイヤモンドのような超高圧下でできた鉱物が含まれているのではないか、という素朴とも言える疑問を当館を開設した当時から持ち続けているわけですが、とにかくムチャクチャ露頭状況が悪いため地質平面図も断面図も描けず、わずかな露頭と山斜面や谷筋に転がっている転石だけの情報から大ざっぱな分布を描くくらいが精一杯のところです。 下の右側の図は、自分がクリノメーターと歩測だけで簡易的に測量して作成したルートマップに岩種別に色付けして各岩種の分布状況を描いたものです。
こんな図面では何がなんだかさっぱり、、、、、という感じです。 西側の頑火輝岩を含む三郡変成岩と東側の火砕岩とが接していますが、どういう関係で接しているかはわかりません。 この火砕岩は有福温泉一帯にみられる凝灰岩などです。 頑火輝岩を含む三郡変成岩はどれも大変風化が進んでいるため緑色片岩と緑色岩との区別も明瞭ではないですが、どちらも鏡下でアクチノ閃石が主要な緑色鉱物を占めています。 また、図では頑火輝岩と緑色岩との境界を実線で示していますが、境界のみられる露頭はただ一箇所だけで、しかも大変風化が進んでボロボロになっていて接触関係がさっぱりわかりません。
はたして頑火輝岩は三郡変成岩とどういう関係の岩石なのか、なぜこんなに岩相に違いがあるのか。 ここの最初の踏査から20年近くも経つけれど、今だに自分なりに結論を出せず今日に至っている次第です。
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広域変成岩に随伴して産する、俗に「菊石」と呼ばれる岩石は、全国を見れば何箇所もあり、似たような地質条件のフィールドも多くあります。 12年前、父親といっしょに鳥取県にあるクロム・ニッケル鉱床の鉱山跡(広瀬鉱山)に行ってクロム鉄鉱の鉱石を採集したことがありましたが、このおり鉱山跡からそれほど遠くないところで姉金産の頑火輝岩に似た俗に「菊石」と呼ばれるような岩石を見ました。 周辺の詳しい状況は知りませんが、おそらくここも広域変成岩に随伴しているんじゃないかと思います。
広域変成岩に随伴している輝岩やカンラン岩、蛇紋岩といった超塩基性岩やそれに準ずる岩石に関して大学の先生方が著されている論文はたくさんあるので大変参考になりますが、似た事例のフィールドに関する論文をこの姉金産の頑火輝岩に当てはめて適当に結論にするわけにはいきません。 露頭状況の悪いフィールドを苦心して踏査しても、安物の偏光顕微鏡でたくさんの薄片を観察しても、わずかな試薬で簡単な分析をしても、、、、とても大学の先生方にかなうわけないですが、しかし、当館のモットーは”野外で実線! 発見学習”です。 完成された知識に頼るのではなく、自分の目と足と手と頭で発見的にこの結論を導出したいです。
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頑火輝岩は、太古の隕石!? ← 「stellarium 0.12.4」からスナップショットした今月12日の満月の画像
当館を開設するずっと以前から、Y大で隕石鉱物などの惑星間物質を研究されていたM先生(江津市跡市町出身)を存じているのですが、日本では異端の科学者として知られている方です。 M先生は、平成4年12月10日に島根県美保関町の民家に落下した隕石について一番先に分析され、その結果を公表された方です。 また、江津市島の星町にある隕石神社に祀ってある隕石を調べられ、その実態を明らかにされたこともあります。 M先生は、地球上にみられる何とも説明のつけがたい特異な地質体やその構造などを地質時代の巨大隕石の落下で説明される傾向の強い研究者で、現職のころから地質学者達とそれがもとで大ゲンカをされてこられました。
たしかに隕石と超塩基性岩とは、その構成鉱物に共通するところが多いです。 日本には産出しませんが、もしかしてダイヤモンドのような超高圧下でできた鉱物などは、太古の昔に炭素質の巨大隕石が地球上に大衝突してできた衝撃変成岩に含まれていた鉱物かも、、、、、という気がしてます。 左の月面画像は地球の方からのみ見える側ですが、裏側には表側以上に隕石の衝突跡(クレーター)があります。 月も地球もほぼ同時にできた天体なわけですから、長い地球の歴史を通して地球にも月と同様にたくさんの巨大隕石が衝突してきたことは間違いないです。
決してM先生の影響だとは思われませんが、筆者も最近は地球外物質に関心が向くようになっている。 大宇宙から比較すれば、地球など、さらに日本列島など、さらに島根県など、さらに江津市の片田舎のフィールドなど、まこと”ニアリーイコールゼロ”であります。 存在しないに等しい。 こんな狭いところにばかりこだわって一生を終わりたくない、自分もアインシュタイン方程式の解法に挑戦して、「宇宙とはこういうものだ」といった宇宙観を自分なりに確立して一生を終わりたい、、、、、自分も加齢のせいか、最近はこういう心境にさいなまれて仕方ないです。
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