(H21年9月1日記載)
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郷土の自然史発見 その3
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断層に沿って侵食が進んでできた滝
観音滝
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位置:島根県江津市桜江町鹿賀
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安山岩の岩片を特徴的に含む凝灰岩でできている滝とその斜面に系統的に刻み込まれた断裂を観察できます。
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国土地理院発行 1:25000地形図「川本」より
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観察のポイント
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観音滝は、江の川の支流 鹿賀谷川の中流にあり、落差が約40m、平均斜度50度の比較的なだらかな滝です(写真1)。 この滝の頂部付近には二段の棚があり、それぞれの棚には小規模な滝壺ができています。
滝斜面に見られる断裂は,方向別に3系統に分けられます(写真2)。 そのうち、北東―南西系の断裂と北西―南東系の断裂は、鹿賀谷川の全流域とその周辺に広く見られ、谷川はこの2系統の断裂に沿ってほぼ直角に細かく屈曲しています。 鹿賀谷川の流域の断裂の多くは、ズレをもたない節理ですが、観音滝やその付近には、北東―南西系や北西―南東系の断裂が他の断裂を切って変位させているところも見られるので(写真3、写真4)、この2系統の断裂には断層も含まれています。(図1)。 さらに滝から下流約500mまでの間にも、この系統の断層がきわめて狭い間隔で無数に発達しているので、観音滝およびその下流500mまでの範囲には小規模な断層帯があると考えられます。
観音滝付近には、斑晶が目立つ安山岩の岩片を含む青灰色の凝灰岩や火山礫凝灰岩が分布しています(写真5)。 この岩石中には、石英と長石の破片状の結晶が多数含まれ、また、長径5mm前後の黄灰色や淡褐色のレンズ状岩片もわずかに見られます。このレンズ状岩片は火砕流に含まれていた軽石が赤熱した状態で押し潰されて扁平になったものです. 観音滝南方の大平山山頂付近には、このレンズ状岩片が目立つ凝灰岩が分布しています.
なお,凝灰岩中の安山岩の岩片は、火砕流を噴出したマグマと同じマグマ溜りに含まれていた半溶融状態のマッシュ(粥状のマグマ)が火砕流に含まれて噴出し、堆積物中で冷えて固まってできたものです。 約3千万年前(古第三紀後期)に江津市桜江町一帯の大地は陥没し、激しい火山噴火が起きて,溶岩や火砕流などが厚く積み重なりました.これらの地層は桜江層群とよばれ,約3000mの厚さをもちます。
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図1:滝の縦断面と北東ー南西系高角度の断裂系
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他の断裂を切って変位させていると思われる断裂(断層)
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写真3:滝斜面上の平行した複数の断層
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写真4:滝壺付近の山斜面の断層
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写真5:安山岩の岩片を含む凝灰岩
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交通
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JR三江線鹿賀駅前の県道を西へ約500m行き、三差路を左折して約1.8Km行くと駐車場があります。 ここから約200m行くと滝があります。
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考察
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川が下刻作用と側刻作用で谷の幅と深さを拡大させながら谷頭を侵食して,谷頭を後退させます。その過程で,滝が形成されるものと考えられます。 鹿賀谷川の発達の初期には、その谷頭は江の川との合流点付近にありましたが、断層に沿って川の浸食が進み,谷頭は現在の観音滝付近まで後退しました。しかし、ここから先には断層などの浸食されやすい断裂がなかったため,谷頭侵食の速度が急減しました。しかし,下流側での下刻・側刻作用は進行して,上流側と下流側で大きな高低差が生じ,滝が作られたと考えられます。
滝にかぎらず、早瀬や淵、甌穴などは、流れが屈曲しているところ、幅広い岩脈や地質境界線が谷川を横断しているところ、川床に硬軟の違いがあるところなどに見られます。 地形図や地質図をたよりに,滝や早瀬、淵などの位置をあらかじめ推測してから野外を歩くと、いろいろな発見に出会えます。
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観光
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↓駐車場
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断魚渓観音滝県立自然公園・中国自然歩道「断魚渓千丈渓」の萩原山断魚渓モデルコースの一部↓
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↓観音滝の由来
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観光地として非常によく整備されており、大型観光バスも駐車できるスペースがあります。 春や秋には地元公民館の主催でウオーキングの集いなどがあります。
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