(H21年4月17日掲載の記事を若干変更)
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郷土の自然史発見 その5
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崖錐斜面に吹きつけた風が涼風に変わる天然のエアコン
八戸の風穴と崖錐地形 位置:島根県江津市桜江町八戸
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急崖から崩れた凝灰岩の転石が錐状に堆積してできた地形とこれがもとになってできた風穴が観察できます。
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国土地理院発行 1:25000地形図「川戸」「石見今市」より
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観察のポイント
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写真1:向山南東側の山斜面
写真3:崖錐堆積物
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写真2:岩塊同士の隙間にできた風穴
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桜江町の八戸地区には、江ノ川の支流である八戸川に面して向山という標高373.4mの山があります。 この山の八戸川沿いの麓(写真1)には大小の風穴(写真2)が点在していて、夏などの気温の高い日中には、この穴から涼風が吹き出ています。
風穴のある向山の岩石は、石英と長石の斑晶状の結晶片と長さ5mm〜3cm位のレンズ状岩片を特徴的に含む結晶質で強溶結の凝灰岩です。 ところどころに安山岩や花崗岩質岩石、珪長岩などの岩片も含んでいます。
風穴のある位置から少し南側へ寄った山斜面には、凝灰岩の大小さまざまな岩塊や岩片が厚く堆積しています(写真3)。 これらの岩塊や岩片は、向山の主に標高150m~山頂付近の急峻な崖から崩落してきたもので、これらが山斜面に錐状に堆積して崖錐地形を形成しています。 この堆積物の厚さは、最も厚いところで30~40m位はあるのではないかと思います。
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図1:向山の南東側山斜面の断面図
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風穴から涼風が吹き出てくるしくみは、次のように説明できると思います。
日中、地表面は太陽からの熱を吸収して温度が上昇しますが、その吸収した熱の大部分は、これと接している大気へ伝わり、地中へはあまり伝わっていきません。 このため、大気の温度(気温)は上昇しますが、地中の温度はほとんど変化なく、気温に較べれば地中の温度はかなり低いです。 このような気象的な条件のため、南東側へ面した崖錐斜面に気温とほぼ同じ温度の南~東よりの風が吹きつけると、風は崖錐を構成している岩塊同士の隙間に入り込み、崖錐内部に入り込んだ空気は、内部の低温に触れて冷却されます。 冷却された空気は密度が大きくなって重くなり、崖錐内部の隙間を通って下方へ移動していきながらさらに冷却されていきます。 そして、十分に冷却されて温度の低くなった空気は、最下部にある風穴から涼風として吹き出ていきます。 空気を豊富に貯留できる崖錐堆積層が、風穴の最も重要な要因(地質的条件)になっているわけです。
夏場と冬場とで比較してみると、明らかに冬場より夏場が風穴から出てくる空気は勢いがよく、冷たく感じます。 これは、夏には南よりの風が強く、また周囲の気温が高いためだと思います。
向山の山斜面にある崖錐地形の形成に関与した主要な地質的条件は、向山の山体やその周辺に見られる北東ー南西系の断裂(節理)と北西ー南東系の断裂(節理)であると思われます。 図1の断面図上では二方向の断裂しか記載しておりませんが、それぞれの系の断裂は、いずれも共役節理であり、実際には、合わせて四方向の断裂によって向山の岩盤はブロック状に寸断されていて、まるで積み木を積み重ねたようになっています。 このため、南東側へ傾斜した向山の山斜面は、南東側へ約50度傾いた北東ー南西系の断裂面に沿って、まるで滑り台を滑べり落ちるように岩盤が崩落し易くなっています。 おそらく、明治5年に浜田沖の日本海で起きたマグニチュード7.1の地震では、大規模な崩落を引き起こし、直下の八戸川へも大量の岩塊がなだれ込んだと思われます。
日中では、上述したように、地面は太陽熱を受けて暖まり、これにより気温も上昇しますが、逆に夜間ではどうでしょうか。 雲のない夜、放射冷却によって地面は大気中へどんどん熱を奪われていきます。 はたして、風穴から出てくる風はどんなんでしょうか。 ぜひ、確認してみたいものです。
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交通
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江ノ川支流の八戸川沿いに、この川の脇の県道を桜江町川戸から旭町方面へかけて行くと八戸川と家古屋川との合流点にさしかかります。 この合流点から約500mほど川戸方面へもどった道の脇にあります。
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観光
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特にないです。 くれぐれも、落石には注意していただきたいです。 風穴から出てくる涼風は、その強さや冷たさは夏季が特に顕著です。
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